株で儲けるにはいろんな方法があるのはわかったわ。でも、やっぱり運の要素があるし、損をする可能性もあるのよね。わたしみたいな資金の少ない零細投資家は1円でも損をすることに抵抗があるのよね。絶対勝てる方法ってないのかしら?
そんなのあるわけないぜ、と切って捨てたいところだが、実は絶対に勝てる方法って存在するんだ。
えっ、なにそれ?そんなのはじめから教えてよ。
インサイダー取引といってな、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して株取引して儲けることだ。
具体的には例えば、株価に最も影響を与えるのが決算だが、会社の役員や決算を取りまとめた会計士など決算の内容を事前に知っている奴は絶対にいるよな。その内容が市場の予想を上回るものだとして、事前にその情報を知っている奴が決算発表の前に株を買ったら確実に儲かるよな?
なによ、それって反則じゃない!
ああ、反則というか、違法だ。5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、さらに、インサイダー取引によって得た財産は全て没収、または課徴される。
結構重い刑罰ね。それじゃあ、インサイダー取引なんてする人いないんじゃない?
いや、いる。いないわけない。儲かると思ったら危ない橋を渡ろうとする人間はいくらでもいる。有名な事件として「村上ファンド・インサイダー取引事件」があるな。 2004年11月に、ライブドアがニッポン放送株を大量に買い付けようとしているというインサイダー情報を入手し、その情報に基づいてニッポン放送株を売買したというインサイダー取引容疑で村上ファンドの村上世彰元代表が逮捕された。
裁判では懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、11億5000万円の追徴金の支払いを命じられた。
ああ、何となく覚えているわ。あれもインサイダー取引だったのね。
村上氏は有名人で、インサイダー取引の額も大きかったから捕まったが、これが一般人で少額取引だったら捕まらなかった可能性が高い。
どうしてそう言えるの?
現在、日本には証券口座が1000万個以上あるんだ。それを全部金融庁だか証券取引等監視委員会が全部チェックしていると思うか?特にわたしたちのような零細投資家の口座などいちいちチェックしないだろう。
それにインサイダー取引は証拠を固めるのが難しいんだ。
証拠?
仮に霊夢が会社のエライさんに株価を動かすような重要情報を発表前に教えてもらったとして、株を売買して儲けたとしよう。 二人以外にその場で聞いている人がおらず、自分で儲けたことも吹聴せず、盗聴もされていないとしてだな、どうやってインサイダー取引だと第三者が証明するんだ?
もし儲けたことを指摘されたとしても、「これは偶然、運が良かっただけです」と言えばどう反論する?
村上氏が逮捕されたのは、事件に関わった多くの人が村上氏の言動を証言したからだろう。村上氏も最後には「確かに聞いちゃったといえば聞いちゃった。」と自分で認めていたからな。
じゃあ、ほぼバレないとしたらインサイダー取引なんてやり放題じゃない。
そうだな。株式市場って性善説みたいなところがあるよな。やろうと思ったらやり放題なんだが、お上も全部は取り締まれないからモラルに任すというか。
わたしはモラルなんてとっくにゴミ箱に捨ててるからインサイダー取引をやりたいんだけど、どうしたらいいの?
あのな、わたしは別にインサイダー取引を推奨しているわけじゃないぞ。
それにな、インサイダー取引をするには上場企業の機密情報を事前に入手する必要があるが、一般人にとってそれは簡単じゃない。
もし霊夢がインサイダー取引をしたいなら、上場企業に就職して、役員に上り詰めろ。
そして、自分の口座で売買するとバレる可能性が高いから、親や友人名義の口座をつかわせてもらって、目立たない金額で取引するんだ。
いや、上場企業って入社するのも難しいわよね?役員になるとか絶対無理だわ。
まあ、ちょっと役員は言い過ぎたな。
わたしも実は上場企業に勤めていたことがあるんだがな、平社員だったが外からはわからない会社の内情を知ることはできた。 決算に関しても上司が次の決算は赤字と教えてくれたこともあったな。
極論言えば、正社員じゃなくても派遣社員やアルバイトでもいい。上場企業で働けば何かしらの内部情報は手に入るはずだ。
うーん、わざわざ内部情報をゲットするために上場企業に潜り込むのは面倒ね。
まあそうだな。なかなかそこまでやる奴はいないだろう。
でも、上場企業で働く友人・知人から話を聞き出すならどうだ? 流石に決算情報までは教えてくれないだろうが、発売前の新商品とか株価に影響しそうな情報はゲットできるかもな。
わたしの友人はニートみたいな子ばかりだから…。
上場企業で働く以外にも情報を得る手段はあるぞ。
●公認会計士になって、大手会計事務所に就職して企業の決算作成に携わる。
●日経新聞の記者になって企業の情報をいち早く入手する
●銀行で働いて取引企業の情報を入手する
●証券会社で働く
●政治家になって企業と深く関わる など、思った以上に色々手段はあるぞ。
ある意味上場企業で働くより難しいじゃない!できないと思ってバカにしてるでしょ!
じゃあな、とにかくパーティーでも飲み会でも人が集まるところに顔を出して交友関係を広げろ。日本には上場企業で働く人が360万人ほどいる。 数撃ちゃ当たるで、人脈を広げたらそのうち上場企業社員に繋がるはずだ。
出典:上場企業サーチ
うーん、わたしのような引きこもりの陰キャにはむずかしいわね。なんかこう、儲けられる会社情報とかネットでゲットできないかしら?
2chとかのネット掲示板でももしかしたら有益な情報が得られるかもしれないが、その情報が本当かどうかわからないのはお前もよくわかっているだろう?
株に関することに限らず、価値のある情報というのは、そんなにラクして得られるものじゃないぞ。 苦手な人も多いだろうが、地道に人間関係を築いて、時には対価を支払い、苦労して得られるものなんだ。
結局、わたしがインサイダー取引で儲けるなんて無理じゃないの!キー、悔しいわ。今回だけは陽キャのパーティーピープルが羨ましいっ!
いや、そもそもインサイダー取引はやっちゃいけないことなんだ。悔しがるなんておかしいだろう…。
さらに深堀り!インサイダー取引
お馬鹿な霊夢は放っておいて、インサイダー取引についてもう少し補足するぜ。
まず、インサイダー規制対象者は以下の通りだ。社員以外にも結構幅広いだろう。
・上場会社役員、従業員、パート、派遣社員など
・上場会社の財務情報など帳簿閲覧権を有する者
・上場会社の取引先、顧問先
・退職して1年以内の社員
・第一次情報受領者…会社関係者から直接インサイダー情報の伝達を受けた人(会社関係者の親族・友人などを想定)
しかしながら、第一次情報受領者からインサイダー情報の伝達を受けた人(第二次情報受領者)以降は、インサイダー取引規制の対象外となっているぜ。
つまり、会社関係者のそのまた関係者から聞いた話ならセーフというわけだ。
それと、会社の情報なら何でもかんでもインサイダー情報というわけじゃない。
「重要事実」といってな、それがインサイダー情報に当てはまる。以下の通りだ。
株式もしくはその処分する自己株式又は募集新株予約権を引き受ける者の募集
資本金の額の減少
資本準備金又は利益準備金の減少
自己株式の取得
株式無償割当て
株式の分割
剰余金の配当
株式交換・移転
合併
会社の分割
事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
解散(合併による解散を除く)
新製品又は新技術の企業化
業務上の提携又は解消
子会社又は孫会社の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得
固定資産の譲渡又は取得
事業の全部又は一部の休廃止
上場廃止の申請
破産手続開始、再生手続開始又は更正手続開始等の申立て
新事業の開始
防戦買いの要請
預金保険法第74条第5項の規定による申出(発生事実)
災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
財産権上の請求に係る訴え、当該訴訟の完結
発行済株式総数の10%以上を保有する株主の異動
仮処分の申立、当該仮処分の決定等
免許取消・事業停止等の行政庁の法令に基づく処分
親会社の異動
債権者その他の当該上場会社等以外の者による破産手続開始の申立て等
手形・小切手の不渡り、手形交換所による取引停止処分
親会社・子会社・孫会社に係る破産手続開始等の申立て等
債務者又は保証債務の主たる債務者に係る不渡り等の発生
主要取引先との取引の停止
債権者による債務免除、第三者による債務引受・弁済
資源の発見
特定有価証券又は、特定有価証券に係るオプションの上場廃止等の原因となる事実(決算等に関する事項)
上場会社等及び当該上場会社等が属する企画集団の、公表された売上高、経常利益、純利益もしくは配当等の予想値についての大幅な修正(その他の重要事実)
上記に掲げる事実に相当するもの
上記以外、つまり、会社の情報と言っても直接株価に関係しないような社内の様子とか、大まかな業績(景気)とかならセーフというわけだ。
重要事実に該当しなくても、会社の業績、ひいては株価に影響を与えかねない情報は色々あると思うぜ。
例えば、社内でセクハラやパワハラが横行している、という情報があったなら、即売りだろう。いつか不祥事が明るみに出て株価が暴落する可能性が高いからな。
そして、インサイダー情報をゲットしたかったら、上場企業関係者に直接聞くのではなく、誰か一人挟めばいい。
また、直接聞くのだったら、重要情報を避ければいいということになる。
ということで、みんな、インサイダー取引は合法的にやってくれよな!